まくんの音楽ノート

自由気ままに音楽とプログラミング

音楽理論基礎:音程を覚えよう

今回は音程の話です。

音程は(調性)音楽において最も基本となる考え方です。 そしてそれはクラシックでもポピュラー音楽でも同じです。

結果的に理由もない暗記で済まされる内容ですし、丸暗記できる量の内容です。

しかし、ふと振り返ると意外とわからない不思議があります。 長・短、完全、増・減という言葉の違いは何なのか。 どんな理由で言葉の使い分けをしているのか。

ふと思うとよくわからないこの疑問に答えられるよう、 音程の考え方の背景から、がんばってまとめました。

音程を覚える前に

結局、半音何個分高いのかを表している

音程は、「長3度」「完全4度」などの言葉で表されます。

つまり、音程を覚えるということは、これらの言葉を覚えていく作業になります

しかし、これらは結局全て「半音何個分」高いかを表しているにすぎません。 短2度と言われても、その正体は「半音1個分高い(つまり隣どうしの関係)」だけです。

難しく捉える必要はありません。

名前の付き方には2つの理由がある

7音音階の分類がしたかった

ではなぜわざわざ「半音○個分」という言い方ではなく、「長3度」のように、わざわざ名前がついているのでしょうか。

その理由は大きく2つあると思われます(私の考えです)。

そのうちの理由の一つは、7音音階(1オクターブを7個の音で分けたスケール。いろいろある)の分類をするためです。

最初に完全の由来ですが、これは長・短の区別よりも古く、もっと物理・数学的な視点による由来です。

かつて使われていたピタゴラス音律では、完全がつく1・4・5度とそのオクターブの音高(周波数)は、簡単な整数比で表せました。 他の音程はこれらに比べると複雑な整数比になってしまいます。 実は、音高の整数比が簡単であるほど、協和した綺麗な響きの和音になります。 完全がつく音程は簡単な整数比の音でしたから、それらは完全な協和音として扱われたのでしょう。 おそらくこの時は4度とか5度という言われ方はなかったのかもしれません。 これらが7音音階上の1・4・5番目の音になることに気づき、完全1度とか完全4度という呼ばれ方が成立したのは、完全という言葉が使われ、定着した後のことだと思われます。

ピタゴラスは、整数を使って現象を表すことを美学としていたようです。 それゆえ、無理数の存在を認めなかったとまで言われています。

ピタゴラスはやはり、単純な整数比で表せるものを愛していたと思います。 それゆえ、単純な整数比で表せる音程は「完全」な存在だったのかもしれませんね。

では長・短はどういう由来があるのでしょうか。 ピタゴラス音律が発明されてまもなく、1オクターブを7個の音で分ける、7音音階の考え方が発生しました。 ここで、7個の音のうち3個はすぐに決まりました。 その3つが、今言われている完全1度、完全4度、完全5度にあたる音です。 これらは先述のように、とても綺麗に協和する音でした。 これを7音の中に含まない手はなかったでしょう。

さて、7個の音のうち3つが決まりましたから、残る4つの音をどう決めるか迷います。 あまりバランスの悪い決め方はしたくありません。 そこで、今決めた3つの音の間を、(音程的に)バランスよく埋めるように他の音を決めました。 その結果、今言われている1度と4度の間に2個、5度と8度(1度のオクターブ上)の間に2個、音を配置することにしました。

4度と5度の間になぜ音を入れなかったのか。 それは後に増4度の項目で説明しますが、完全4度と完全5度の間にある増4度は非常に不協和で、怖い響きがある音程だからです。 協和する美しい音程を求めたヨーロッパの音楽家たちは、増4度をレギュラーメンバーに入れることを拒んだのではないかと思います。

さて、配置の方針は決まりましたが、これだけでは不完全です。 完全1度と完全4度の間には半音4個分の選択肢があります。 完全5度と完全8度の間も同様です。 音楽家たちはこの半音4個分の選択肢から、2つの音を割り当てなければなりませんでした。 4個の選択肢から2個を選ぶ組合せは全部で \rm {}_4 C_2 = 6通りあります。

しかし、音楽家たちはやはりここもバランスよく配置したかったのでしょう。 そして、前後のバランスがいい感じになるように、4つの音を配置しました。 その結果、2度・3度・6度・7度はそれぞれが干渉しない(重ならない)ような、2つの選択肢を持つことになりました。

ここで、2つの選択肢を持った2度・3度・6度・7度ですが、これらを区別する必要がありました。 そこで、単純ながら、完全1度からみて距離が長いものを「長X度」、短いほうを「短X度」というように名前をつけて区別しました。 それが普及し、そして現在まで伝わってきたことで、長3度、短3度という呼び方で今でも区別されているのです。

この考え方は、筆者である私の仮説のようなものです。

歴史的に正しいかどうかはわかりませんが、一種の理解の参考になれば幸いです。

もう一つの理由は、楽譜文化の名残

もう一つは、楽譜文化の名残です。

クラシック音楽に限らず現在のポピュラー音楽も、曲を書き表すときは五線譜を使います。 五線譜は、最初の調号さえ決めてしまえば、それに対応するスケールの構成音はシャープ・フラット無しで全て表せます。 しかし、スケール外の音を使いたくなった場合、臨時記号としてシャープやフラットをつけますよね。 このわざわざ書くシャープとフラットがついた音を、音程としてどう表現するのか。 これの解決策として、その音に「増」「減」という言葉をつけて表すことにしたのです。

結局、増・減というのは五線譜の都合で生まれたのです。 逆に言えば、増・減は一時的な変化という意味合いを残しているとも言えますがね。

また、五線譜は演奏者にとっても必ずしもわかりやすい場合ばかりではありません。 たとえば、ダブルシャープやダブルフラットという概念は、五線譜に書くときに見やすくするために生まれたものです。 使いたい音を書くと五線譜上で重なって見にくいときがあります。 その場合、わざとずらしたところに音符を書き、それにシャープやフラットをたくさんつけることで誤解を避けます。

当たり前ですが、これらの理論は西洋から入ってきたものです。 ですから、現在日本語で語られている西洋の音楽理論は誰かが翻訳したものです。

Major, Minorは長・短と訳されていますが、これは言ってしまえば直訳です。 Majorは「(規模・数量などが)比較的大きい」、Minorは「比較的小さい」という意味があります。 それらはもちろん音の距離に対して係っていた言葉だったので、「長い」「短い」で訳したのでしょう。

もし長3度・短3度ではなく「明3度」「暗3度」と訳していたら、音程が持つ性格は伝わりやすかったかもしれませんね。 しかし、用語を変える必要はないでしょう。 使っているうちに、長は明るい、短は暗い、というようなイメージが頭の中に刷り込まれていくからです。 用語そのものに音に対するイメージを与えないほうが、そこから生まれるイメージの多様化に期待できると思います。

音程を覚えよう

音程は高くなる方向しか考えない

改めて音程(インターバル)とは、ある音から相対的にみた音の高さのことです。 そしてその音の高さは、半音単位で数えます。単位は「」です。

実は、音程は基準の音より高い方にしか数えません

一応定義上は「重減」というものを使ってマイナス1は数えられるのですが、 これは最も短い距離の関係である短2度にダブルフラットをつけた時です。 マイナス1を数えられるのは仕様上のおまけと考えてよいでしょう。

ピアノにおいて、基準の音をCにしたときの音程の呼び方を以下の図に示します。

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基本的に上図のような表し方になります。 短3=増2、なども言えなくはないですが、あえて書かなかった理由はちゃんとあります。 詳しくは増・減がつく音程の節で説明しています。

完全がつく音程

完全1度

基準の音からみて、まったく同じ高さの音は完全1度です。 0度ではなく1度である理由は、前節で書いたとおり「スケールの1番目の音だから」です。

完全4度

基準の音から見て、半音5個分高い音を完全4度といいます。

完全5度

基準の音から見て、半音7個分高い音を完全5度といいます。

完全5度は安定感があり、コードの話となると特によく出てきます。

複雑そうだけど心地よく感じるコードは、構成音のどこかに完全5度が隠れていることが多いです。

完全8度

基準の音から見て、半音12個分高い音を完全8度といいます。

完全8度は1オクターブの関係です。 1オクターブ高い音は完全8度になります。

同様に、3オクターブ高い音を完全15度、というように、オクターブの関係はすべて完全XX度と書けます。

完全がつく音程の転回

完全が長・短と異なる点は、転回をしたときの音程の変化です。 ここでいう転回はコードの転回形(C/Eみたいな)ではなく、転回音程です。

音程の転回を簡単に説明すると、基準の音を対象の音より高くなるようにオクターブ移動して、基準と対象を入れ替えることです。 基準がC3、対象の音がF3だとしたら、転回すると基準がF3、対象の音がC4になります。

全音程は、転回してもまた完全音程になります。ここポイント。

完全1度の転回音程はもちろん完全1度です。 完全8度の転回音程も、オクターブの関係ですから完全8度になります。

完全4度の転回音程は完全5度になります。 同様に完全5度の転回音程は完全4度になります。手元の楽器で確認してみてね。

長・短がつく音程

短2度と長2度

基準の音から見て、半音1個分高い音を短2度といい、半音2個(=全音)高い音を長2度と呼びます。

これらの音はスケールの2番目の音として登場します。

短3度と長3度

基準の音から見て、半音3個分高い音を短3度といい、半音4個分高い音を長3度と呼びます。

先に言っておくと、コードの性質を決定するとき、3度はとても重要な役割を持っています。

長3度だと明るい響き、短3度だと暗い響きになります。

短6度と長6度

基準の音から見て、半音8個分高い音を短6度といい、半音9個分高い音を長6度と呼びます。

短7度と長7度

基準の音から見て、半音10個分高い音を短7度といい、半音11個分高い音を長7度と呼びます。

7度は四和音を作る時の4番目の音となります。 7度が入ることにより、コードの響きはより複雑に、オシャレになります。

長・短がつく音程の転回

長・短がつく音程の転回音程は、長・短が逆転して、数字が対応するものに入れ替わります。

  • 短2度ー長7度
  • 長2度ー短7度
  • 短3度-長6度
  • 長3度ー短6度

パターンがつかめましたか?

増・減がつく音程

増・減は何にでもつけられる

実は、増・減というのは臨時変化ですので、原則全ての音程につけることができます。 だから、増・減を使うことで、表せる範囲が広がります。

ここで、じゃあ短3度と増2度は同じじゃないか、というツッコミが入ります。

これらの違いについて説明します。 ざっくり言うと、表している音の高さは同じですが、意味合いが違います

増・減は、臨時記号としての意味合いを持っています。 つまり増2度と言われた場合、それはあくまで長2度が一時的にシャープしているだけで、 解釈としては2度(スケールの2番目の音)である、という意味になります。

逆に短3度と言われた場合、これは3度の音であるという意味合いがあり、臨時記号で一時的に音程を変化させている、という意味は含みません。

五線譜に書いてみるとすっきりとわかります。 増2度は、長2度になる音符にシャープをつけるはずです。 つまり、それはあくまで2度という扱いなのです。 五線譜上で短3度を表したければ、臨時記号を使わずに、3度の位置に音符を書きます。 そのためには、調号を付け直す必要があることもあります。 五線譜が何よりも重要視しているのが、1〜7度の音をそれぞれ別の位置(縦方向の意味)に書けることです。

節の最初に「原則全ての音程につけられる」と言いましたが、例外がひとつあります。 それが1度です。 ここまで、完全1度を説明しました。 完全1度は、まったく同じ高さの音でしたから、それ以上に狭い音程は半音単位では数えられませんね。 それゆえ、減1度は存在しません。 マイナス方向に半音1個分高いとも考えられますが、五線譜の都合上そういう使い方はされないようです。

「原則」と書かれた場合、必ず例外があります。覚えておくとよいでしょう。

完全がつく音程の増/減の音程は、完全の音から半音高い/低い音程となります。

一方、長・短がつく音程の増/減の音程は、

  • 増:長X度より半音高い音程
  • 減:短X度より半音低い音程
となります。 これを知らないと、ディミニッシュ7th(減7の和音)を学ぶときに引っかかります。 Cdim7の4音目は、B♭ではなくAです。 なぜなら減7度は短7度よりさらに半音低いから。 自分も最初引っかかりました。

特に重要な増4度

増・減音程の中でも特によく押さえておいてほしいものは、増4度(減5度)です。 先ほどのピアノの図にも出てきましたね。

増4度はトライトーンとも呼ばれています。 意味は三全音、すなわち全音3個分の音程です。

たとえばCとF#は増4度の関係になります。 この2音を同時に鳴らすと、非常に不安定で、怖い響きがします。 この不安定な和音は、何か安定した和音に落ち着きたくなる特徴がありますドミナントモーションはこれを利用した和音の解決方法です。

ちなみに、増4度の転回は減5度です。 しかし減5度は増4度と同じですから、転回しても同じ音程になることがわかります。 このことは後に裏コードを学ぶ時に役立つ知識になります。

余談となりますが、ピタゴラス音律ではなんと減5度と増4度の音の高さが違います(物理的に)。 つまり昔、増4度と減5度は明確に区別されていました。

しかし今は区別されていません。 なぜなら、現在使われている平均律では、これら2音はまったく同じ高さの音となるからです。

このウェブサイトは平均律を前提として書いていますから、区別せずに扱います。

重増・重減がつく音程

増・減が楽譜上のシャープ・フラットであれば、重増・重減はそれの2つ重ね、ダブルシャープとダブルフラットに対応します。 しかし、実際楽譜上でしか出てこないものですから、そんなものもあると知っておけば十分だと思います。

ちなみに減1度同様、重減1度もありません。

ただし重減2度は存在し、これはなんとマイナス1半音の関係になります。 しかしまたこれも五線譜の都合上存在するだけです。 読むときは低い方から短2度として考えます。

音程が重要な理由は、曲のキーにあり

音程で表せば、曲のキーは関係ない

なぜ「ある音から見たときの音の高さ」なんてものをわざわざ使っているのかと言うと、 それは、2つの音の関係がもたらす響きの特徴は、音程が同じなら同じになるからです。

要は、キーが変わっても、本質的に同じものを同じとして扱えるのです。 これは調性音楽の本質と言えるでしょう。 仮に音の高さを周波数(ヘルツ)で表しても、それは物理的には本質的ですが、音楽的には特に意味を成しません。

まとめ

音程は本当に基礎の基礎ですが、いざまとめてみるとなかなか苦労しました。 一部私の仮説のような説明も入りましたが、私なりにはうまくまとまったかなと思います。

音程で表すことは、調性音楽として本質です。 それゆえ、この先の理論においては、ある2音の関係はすべて音程を使って表されます。

音程の名前を覚えつつ、その音程がもたらす響き、跳躍感などを確かめてみるとよいでしょう。